子育てをする中で必ず出てくる「子どもとゲーム」の問題。
この記事では「長時間のゲームが子どもの脳に影響を及ぼす」という論文の結果を元に、子どもとゲームの付き合い方について解説します。
それぞれの家庭で親が一度は直面し、時間制限やルールを決めて試行錯誤しているのではないでしょうか?
子どもとゲームの距離感をどの程度に保つべきなのか、この記事を読めばひとつの指針ができること間違いなしです。
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ゲームの役割に多様性が出てきたが、知っておくべきことがある
こんにちは、とんびーです!
「ゲームをさせる?させない?」
「どのくらいの時間ならゲームをさせてもいいの?」
ひと昔前なら上のような単純な悩みで済んだものでした。
でも最近は、子どもとゲームの付き合い方が断然難しくなりましたよね。
ゲームをすることが目的ではなく、ゲームを使って何かをするという時代になったからです。
「ゲームでプログラミングが勉強できるの?」
「プログラミングしてゲームを作るって???」
画面に向かってゲームすることにただただ反対していたのでは、
子どもの将来につながる可能性をつぶしているかもしれません。
「じゃあ、ゲームを制限するってもう古いの?」
「ゲームが勉強の支障になるっていうのは間違っていたのかな?」
「可能性をつぶすのはかわいそうだから、どんどんやらせればいいんじゃない?」
という気持ちにもなってきます。
ゲームと子どもの距離感をどのように保つべきなのか、親はますます頭を悩ませることになりそうです。
でも、私は上のように考えるのは早計だと思っています。
「長時間ゲームをするとどんな影響があるんだろう?」という視点と、
実際にどんな時にどんな影響があるのかを知ってから、
改めて「子どもとゲームの付き合い方」について考えるべきだと思うからです。
「長時間のゲームが子どもの脳に影響を及ぼすのかどうか」
を調査した結果を、まずは確認してみましょう。
ゲームをすると子どもの脳に良くない影響があるのか?
ずばり、良くない影響があります!
ゲームの影響として、ひと昔前から言われてきたのは、
- 視力が落ちる
- 成績が下がる
この2点です。
この2つももちろん心配なことなんですが、
実は「子どもとゲーム」の付き合い方をさらに慎重に考えるべき事実があります。
長期にわたる「長時間のゲーム」が脳に与える影響
2016年に東北大学の脳科学者川島隆太教授らの研究により、下記のことが明らかになりました。
「ゲームをすることが小児の日常生活において大きな幅を占めるものになっている」とした上で、
- 長時間のゲームが直接的または間接的に好ましい神経系の発達を妨害する
- これは言語性知能の発達の遅れに関連している可能性がある
つまり、
「長時間ゲームをすることで言語性知能が低下する」
ということです。
ちなみに、言語性知能とは言語を使った思考力や表現力の知能指数のことで、これまでにその子どもが経験したことが元になるものです。
アメリカの米国精神医学雑誌「Molecular Psychiatry」に掲載されたこの研究は、以下のように行われました。
- 5歳~18歳の男女(平均約11歳)が対象
- 日々のゲーム時間を含む生活習慣などについて質問
- 知能検査とMRIの撮影
- 3年後に再び知能検査とMRIの撮影
一時的なものではなく3年後に再び調査し脳の変化を探っているんです。
さらに、このような結果も述べられています。
これらの解析の結果、初回参加時における長時間のビデオゲームプレイ習慣は、初回参加時の低い言語性知能と関連し、初回参加時から数年後の2回目参加時へのより一層の言語性知能低下につながっていました
引用:東北大学加齢医学研究所
長時間のビデオゲームが小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能に及ぼす悪影響を発見 より
つまり、
- 最初の調査の時点で長時間のゲーム習慣があった場合には、言語性知能が低い
- 2回目の調査では、より一層言語性知能が低下していた
最初の調査から3年間の間にも、長時間のゲーム習慣により言語性知能が低下していたんですね...
長時間のゲームはゲーム障害も引き起こす可能性が...
また、ゲーム中毒についても以下のように触れられています。
ビデオゲームをプレイしている時は、快感や意欲に関わる神経伝達物質のドーパミン系のシステムにおける多くのドーパミン放出が起こり、ビデオゲームは中毒につながりうることも知られていました
引用:東北大学加齢医学研究所
長時間のビデオゲームが小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能に及ぼす悪影響を発見 より
長時間のゲームを繰り返しているとゲーム障害を引き起こす可能性もあります。
ゲームの時間を自制できない、ゲーム以外の物事の優先度が低くなる、
日常生活に支障がでても、ゲームをやめられない。
上記が1年以上続いている状態を「ゲーム障害(Gaming Disorder)」と言います。
以前から問題になっていましたが、2019年には世界保健機関(WHO)が正式な疾患として認めました。
そもそも依存はどのようにして起こるのでしょうか?
「依存」とは、少々とっつきにくいだけでなく、誤解を招きやすい用語でもある。病としての「依存」を正しく理解するためには、「脳のシーソーゲーム」を知ることが近道だ。通常、私たちの行動は、「本能」を司る大脳辺縁系(以下「辺縁系」)と「理性」を司る前頭前野によってコントロールされている(中略)
この2つの脳は日夜シーソーゲームを繰り返しており、通常は前頭前野がやや優勢な状態で平衡が保たれている。だが、依存の状態にある脳は、前頭前野(理性)よりも辺縁系(本能)が優勢な状態が続き、欲求や行動を自らの意思でコントロールできなくなってしまう引用:HuffPost ゲームの依存性に注意。患者の脳に見られる特徴的な反応がアルコール・ギャンブル依存に酷似より
依存は「欲求や行動を自らの意思でコントロールできなくなってしまう」状態です。
長時間のゲームを繰り返していると、本能が優勢な状態が続いてしまうんですね。
言語性知能の低下もゲーム障害も、長時間のゲームの繰り返しで脳がダメージを受けた状態なんです。
日本より一足先にe-sportsのブームがきた韓国や中国では「ネトゲ廃人」と言われるネットゲームの依存者が社会問題になっています。
実は日本でも以下のように、年々ゲーム障害の患者数が増えています。
出典:厚生労働省 第2回ゲーム依存症対策関係者会議より
私たち親が何となく感じていた「ゲームって大丈夫なの?」という不安は正しかったと言えます。
だからと言って、ゲームが「常に良くない影響を与える」わけではないこともわかります。
冒頭でお話したように「ゲーム自体が目的」でも、「ゲームを使って何かをする」にしても、
ゲームで学べるたくさんのことや良い影響まで省く必要はないわけです。
悪影響から考える「子どもとゲームの付き合い方」
これまでの話から、ゲームが引き起こすかもしれない影響は以下の通りです。
- 脳への影響
- 視力への影響
- 勉強への影響
さらに、子どもにふさわしくない内容のゲームからも影響を受けるでしょう。
こういった影響から、子どもとゲームの付き合い方を考えていきます。
- ゲームが目的の場合は必ず上限を決める
- 小さな画面のゲーム機、スマホゲームはなるべくしない
- ヒマな時間 = ゲームの時間にしない
- ゲームの内容を制限する
ゲームが目的の場合は必ず上限を決める
前述した「長時間のゲーム」が脳に及ぼす影響を知ると、長時間のゲームを繰り返すことに今まで以上に抵抗がありますね。
毎日のゲームが日課になっているなら時間制限は絶対に必要でしょう。
ただし、e-sportsやタブレット学習、プログラミングの勉強など、ゲームを使って何かをするという目的がある場合、この通りには行きませんよね。
ここが難しいところです。
日常生活でキッチンタイマーを活用すると得られる4つのメリットについては、以下の記事が参考になります。
【キッチンタイマー勉強法と4つのメリット】日常生活が変わるキッチンタイマー
小さな画面のゲーム機、スマホゲームはなるべくしない
視力の低下を避けたいなら、昔から言われている「近くで物を見ない」は正解です!
近視になる要因には、
- 近くで物を見る作業をすること
- その作業時間が長いこと
があげられます。
最近人気の小さな画面のゲーム機やスマホゲームはどうしても画面と目の距離が近くなります。
画面に近ければ近いほど時間が長ければ長いほど近視になりやすい環境です。
ここでも長時間のゲームが影響を及ぼします。
ゲームをするなら大きな画面で時間制限をつけるのがベストです!
ちなみにゲームと同じくスマホとの付き合い方も難しい問題ですよね。
子どもにスマホを渡すべきタイミングとスマホとの付き合い方については、以下の記事が参考になります。
【子どものスマホはいつから?】タイミングを見極める大事な判断材料とは?
ヒマな時間 = ゲームの時間にしない
脳への影響を考えれば「ヒマな時間 = ゲームの時間」は避けたいですよね。
そこで親としてできるのは、子どもが物心つく前に、
「ヒマな時間にやることの選択肢を増やしてあげること」
です。
とんびー家では特別なことがない限り、子どものゲームの時間は多くても1日1時間までとしています。
子どもの頭の中が「ゲーム、ゲーム!!!」とならなかったのは、
物心つく前にゲーム以外の遊びや興味関心の持てることを実践してきた成果だと感じています。
具体的には以下のことに気をつけています。
「言葉を使ったり、言葉を学ぶ時間」をゲームで潰さないようにする
先ほどの研究結果の中では、
「毎日の活動(たとえば、勉強、読書、他の人との会話、運動)が、長時間のゲーム時間に置き換わったために言語活動が減り、言語性知能の低下が起こった可能性もある」
とも指摘しています。
これは当然で、暇な時間にずっとゲームをしていれば、家族との会話、読書、勉強、外遊びをしなくなります。
言葉を使ったり、言葉を学ぶ時間をゲームが奪ってしまったので、言語性知能の低下が起こったのかもしれません。
言葉を覚える、言葉が育つ時期は特に、ゲームの時間を管理してコミュニケーションの時間を増やすようにしました。
時間の使い方・選択の幅は親が教えるべき
子どもが自分の人生の時間をどう使うかは、最終的には子ども自身が決めることです。
でも、より良い使い方、使う時の選択の幅を子どもに教えられるのは親です。
どういう時間の使い方をするといいのか、いろいろな選択肢、選択の幅の広げ方を小さな頃から教えてあげる。
私自身のことを思い返すと、子どもってすごく狭い世界を見ているなと感じます。
周りから教えてもらわないとわからないことってたくさんあるんですよね。
大人になってから、
「子どもの頃にそれを知っていたら、今こんなんじゃなかったわ」
「何で教えてくれなかったの!」
って思ったことが何度もあったと思うんです。
周りの大人が何を教えてあげるか、ゲームに奪われずに済んだ時間にどんなものに触れ、何をするかで、その先の人生が変わっていきます。
そう考えるとやはり、ゲームには時間制限を作り、小さな頃からゲーム以外の選択肢がある環境を作っていくのが大事だなと感じます。
子どもの興味やいろいろな選択肢は、文化資本を高めることで広げることができます。
教育格差と文化資本格差の関係については、以下の記事が参考になります。
【教育格差と文化資本格差の関係】家庭でできる!学力アップのための文化資本の高め方
「やることをやったらゲームは自由」は場合による
「子どもの自立心が育たない」
「時間管理は自分でさせるべき」
「何でもかんでも親が制限したり、ルールを決めた中で育った子どもが、将来どうなるのか心配」
という考えから、
「勉強などのやらなければならないことをやったら、ゲームは好きなようにさせている」
という方も結構多いのではないかと思います。
私は、子どもが自分の人生をゲームばかりに費やさないように、
上述した「選択の幅」を小さな頃から持てるようにいろいろ工夫をしてきました。
だって、いくら勉強したとしても、子どもの頃の貴重な時間を多くのゲームに費やし、
さらに「脳へのダメージ」を拡大させているとしたら、自立どころじゃありません。
まずは「ゲームよりも楽しいこと」をたくさん教えてから、「選択肢の中のひとつにゲームがある」という状況を作りました。
だから、「やることをやったらあとは好きにしてよい」というのは、ゲームに限っては危険だなと感じます。
ゲームの内容を制限する
映画やテレビや雑誌などの内容を制限するのと同様に、子どもに見せるべきではない内容から距離を置くべきです。
映画にPG12のようなレーティングがあるようにゲームにも設定されています。
日本ではこういったことにゆるかったり、軽視する風潮があると感じています。
日本ではPG12(12歳未満は、保護者の助言・指導が必要)なのに対し、
北米ではR指定(17歳未満の観賞は保護者の同伴が必要)でした。
欧米は結構厳しい印象ですよね。
ところが日本では、鬼滅の刃が公開された日のニュースで、まだ幼稚園くらいの子どもが親と一緒に映画館に入っていく様子が放送されていました。
その子どもによって感受性が違いますから、レーティングより年齢が上だったとしても、
ゲームの内容が子どもにふさわしいかどうかは、親が判断するべきだと私は考えています。
ホラーや残虐性の高いものに子どものうちからわざわざ触れる必要性がわかりません。
ちなみにとんび―家では、進撃の巨人も鬼滅の刃も中学生になる直前までほとんど見ませんでした。
まとめ|【子どもとゲーム】時間制限とルールはもう古い?と考える前に知るべき脳への影響とゲームとの付き合い方
この記事では「長時間のゲームが子どもの脳に影響を及ぼす」という論文を元に、子どもとゲームの付き合い方について解説してきました。
以下のようなデメリットが存在するのも確か。
- 脳への影響
- 視力への影響
- 勉強への影響
- 子どもにふさわしくないゲーム内容による影響
でもゲームやPCなど、使い方の多様性が出てきた以上、それに合わせて親の価値観を少しずつ変化していく必要もあります。
- ゲームが目的の場合は必ず上限を決める
- 小さな画面のゲーム機、スマホゲームはなるべくしない
- ヒマな時間 = ゲームの時間にしない
- ゲームの内容を制限する
この記事で親としてどうするべきなのか一つのヒントになれば幸いです。